記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
「ノーコードなら安く早く作れると聞いたのですが、わざわざ開発会社に頼む意味はありますか」。アプリ開発のご相談をいただくと、最初の打ち合わせでこうした質問を受けることが増えました。
結論からお伝えすると、どちらが優れているという話ではありません。ノーコードで十分な会社もあれば、最初から受託開発にしたほうが結果的に安く済む会社もあります。
この記事では、ノーコードと受託開発の違いを、費用の比べ方、それぞれの限界、向いている会社の見分け方という順番で整理します。料金の改定や市場の動きなど、ここ1年ほどで起きた変化も踏まえて解説します。
筆者は全日本SEO協会認定SEOコンサルタントとして、Web制作とSEOに10年以上携わり、延べ1,000件以上のご相談に対応してきました。現在はアプリ開発のご依頼も受けており、作る側と使う側の両方の目線からお伝えします。
ノーコードと受託開発、それぞれどんな作り方か

まずは言葉の意味をそろえておきましょう。似た言葉が多いため、ここがずれたまま比べると、見積りや社内の議論がかみ合わなくなります。
ノーコードとは「部品を並べて作る」方法
ノーコードとは、プログラムを書かずに、画面上で部品を並べたり設定を選んだりしてアプリを作る方法です。入力フォーム、一覧表、承認ボタンといった部品があらかじめ用意されていて、それを組み合わせていきます。
代表的なものとして、Googleの「AppSheet」やMicrosoftの「Power Apps」などがあります。社内の申請や在庫の記録、点検の報告といった業務アプリでよく使われています。
ローコードは「少しだけ書く」中間の方法
ノーコードとよく並べて語られるのがローコードです。基本は部品を並べて作りますが、細かい処理だけは短いプログラムを書いて補う作り方を指します。
実際の製品は、ノーコードとローコードの両方の使い方ができるものが多くなっています。この記事では、両者をまとめて「ノーコード」と呼んで説明します。
受託開発とは「自社専用に一から作ってもらう」方法
受託開発は、開発会社に要望を伝え、自社専用のアプリを設計から作ってもらう方法です。画面の見た目、データの持ち方、ほかのシステムとのつなぎ方まで、すべてを自社に合わせて決められます。
ノーコードは「用意された部品の範囲で作る」、受託開発は「部品そのものから作る」と考えると違いがつかみやすくなります。どちらにも得意なことと苦手なことがあります。
「ノーコードを外注する」という第三の選択肢
意外と知られていないのが、ノーコードツールでの構築を外部に頼む方法です。ツールの利用料は自社で払い、設定や画面づくりを詳しい人に任せる形になります。
社内に担当者がいなくてもノーコードの手軽さを生かせる一方で、ツールの限界はそのまま残ります。後ほど説明する限界を理解したうえで選ぶことが大切です。

ここ1年でノーコードを取り巻く状況はどう変わったか

ノーコードは数年前から注目されてきましたが、2026年に入ってからも状況は動いています。比べる前に、前提となる最近の変化を押さえておきましょう。
市場は伸び続けている
調査会社ITRが2026年2月に発行した市場調査レポートの概要によると、国内のローコード/ノーコード開発市場の2024年度の売上金額は994億円で、前年度比15.1%増でした。2025年度も14.9%の増加が見込まれています。
同じ概要では、上位3社で市場の5割以上を占める寡占化が進むとの見通しも示されています。使う会社が増えている一方で、選ばれる製品は限られてきているということです。
すでに契約しているサービスに含まれていることがある
Googleの管理者向けヘルプによると、AppSheetの基本的な機能を使える「AppSheet Core」のライセンスは、ほとんどのGoogle Workspaceのプランに追加費用なしで含まれています。2023年7月に、含まれるプランを広げることが発表されています。
Google Workspaceをすでに使っている会社なら、新たな契約をしなくても試せる場合があります。まずは自社の管理画面で利用できるかを確かめてみるとよいでしょう。
料金の改定が相次いでいる
Microsoftは公式サイトで、Power Apps Premiumの価格を1ユーザーあたり月額20米ドル(年払い)と案内しています。そのうえで2026年9月、管理者向けのお知らせで、2027年1月1日以降の新規購入や更新から、各プランを1ユーザーあたり月額2米ドル値上げすると告知しました。
あわせて、アプリ単位で契約できた安価なユーザーライセンスが、2026年1月から新規の契約向けには提供されなくなったと報じられています。ノーコードの費用は「今の料金」だけでなく、将来の改定もありうるものとして見ておく必要があります。
AIに指示して作るサービスも増えた
文章で「こういうアプリがほしい」と伝えると、AIが画面や処理を組み立ててくれるサービスも増えてきました。試作品を短時間で作れる点は大きな魅力です。
ただし、できあがったものの中身を誰が確認し、誰が直していくのかという問題は、従来のノーコード以上に大きくなります。この点は受託開発との比較でも重要になるため、後ほど詳しく触れます。

費用の違い|初期費用と月額をどう比べるか

ノーコードと受託開発を比べるとき、最も誤解が多いのが費用です。初期費用だけを見ると、たいていノーコードのほうが安く見えます。
ノーコードは「人数×月額」で増えていく
多くのノーコードツールは、アプリを使う人の数に応じて毎月の料金がかかる仕組みです。作るのにお金はかからなくても、使い続ける限り費用が発生します。
例えば1ユーザー月額20米ドルのプランを30人で使うと、月600米ドル、年7,200米ドルになります。利用者が増えたり、値上げがあったりすれば、その分だけ毎年の負担が大きくなります。
受託開発は「最初に大きく、あとは保守費」
受託開発は、最初に開発費がまとまってかかり、公開後は保守費とサーバー代を払っていく形が一般的です。利用者の人数で料金が変わらない作り方にすることもできます。
開発費は機能の数や画面の多さで大きく変わるため、一概にいくらとは言えません。相場の考え方は、別の記事で詳しくまとめています。
当社での料金の目安は、機能を選んで概算できるシミュレーターとあわせてアプリ開発のページで公開しています。

比べるなら「3〜5年の合計」で見る
費用を比べるときは、初期費用と毎月の費用を足した「3〜5年の合計」で比べるのが基本です。1年目はノーコードが安くても、利用者が多い会社では数年で逆転することがあります。
反対に、利用者が数人で、業務の内容が頻繁に変わる会社なら、ノーコードのほうが長く見ても安く済むことが少なくありません。人数と使う期間の見込みを、先に書き出してみてください。
見落としやすい「人の時間」という費用
ノーコードは社内で作れる分、担当者の時間を使います。作る時間だけでなく、ツールの使い方を覚える時間や、不具合が起きたときに調べる時間もかかります。
受託開発でも、要望を整理して伝える時間や、完成前の確認に社内の時間は必要です。どちらを選んでも「社内で誰がどれだけ関わるか」を費用の一部として考えておくと、比較の精度が上がります。

ノーコードのデメリット|導入前に知っておきたい5つの限界

ノーコードは手軽な反面、どうしても越えられない壁があります。導入してから気づくと作り直しになるため、先に確認しておきたい点を5つにまとめます。
限界1:用意された部品の範囲でしか作れない
画面の配置や動きは、ツールが用意した部品と設定の範囲に限られます。「この画面だけこう動かしたい」という細かな要望ほど、実現できないか、無理な組み方になりがちです。
業務の流れをアプリに合わせられる会社には問題になりにくい一方、独自のやり方そのものが強みの会社では不満が残りやすくなります。
限界2:データやアプリを持ち出しにくい
ノーコードで作ったアプリは、そのツールの中でしか動きません。ツールをやめるとき、データは書き出せても、画面や処理の仕組みはそのまま別の環境に移せないのが一般的です。
導入前に「やめるときにデータをどの形式で持ち出せるか」を確認しておくことが、いちばんの保険になります。サービスの終了や大幅な値上げがあったときに、選択肢を残せるからです。
限界3:利用者が増えるほど費用が膨らむ
前の章で触れたとおり、人数に応じた課金では、社員全員や取引先にまで使ってもらうと費用が一気に増えます。お客様向けに広く配るアプリには向かないことが多いのはこのためです。
一部のツールには外部の利用者向けの料金体系もありますが、条件はツールごとに異なります。誰に使ってもらうのかを決めてから料金表を確認してください。
限界4:ストアで公開できるとは限らない
お客様にスマホへ入れてもらうアプリを考えている場合は、特に注意が必要です。AppleのApp Store審査ガイドライン4.2.6では、テンプレートやアプリ生成サービスから作ったアプリは、内容の提供者自身が申請しない限り却下するとしています。
また同4.2では、Webサイトを包み直しただけのものを超える機能や使い勝手が求められています。ノーコードツールによってはストア公開に対応していなかったり、別料金だったりするため、事前の確認が欠かせません。
お客様に配るアプリを考えているなら、ツールを選ぶ前に「自社のアカウントでストアに申請できるか」を確かめてください。ここを後回しにすると、完成してから公開できないことに気づくことになります。

限界5:作った人しか分からなくなる
社内の一人がノーコードで作り込んだアプリは、その人が異動や退職をすると誰も直せなくなることがあります。手軽に作れる分、設計の記録が残りにくいのです。
作り方のメモや、データの項目の一覧を残しておくだけでも、この問題はかなり防げます。複数人で触れる体制をつくっておくことをおすすめします。
受託開発のデメリットと失敗しやすい点

受託開発にも弱点があります。ノーコードと公平に比べるために、こちらもはっきりお伝えします。
初期費用と期間がかかる
一から作る以上、ノーコードと比べると最初の費用は大きくなり、公開までの期間も長くなります。ストアで公開する場合は、審査やアカウントの準備にかかる日数も見込んでおく必要があります。
例えばGoogle Playでは、2023年11月13日以降に作った個人のデベロッパーアカウントの場合、12人以上で14日間のクローズドテストを経ないと一般公開を申請できません。こうした待ち時間は、開発会社の努力だけでは縮められない部分です。

要望を言葉にする手間がかかる
受託開発は、自社が何をしたいのかを開発会社に伝えるところから始まります。この整理が不十分だと、できあがってから「思っていたものと違う」となりがちです。
受託開発の失敗の多くは、技術ではなく「最初の要望の整理」で起きています。紙やExcelで今どう業務を回しているかを見せるだけでも、伝わり方は大きく変わります。
開発会社に頼りきりになりやすい
ノーコードのツール依存と同じように、受託開発には特定の開発会社への依存という問題があります。作った会社しか中身が分からない状態だと、保守費や改修費の交渉がしにくくなります。
契約の段階で、プログラム一式の受け渡しや、設計書の作成を取り決めておくと安心です。著作権や不具合への対応の範囲も、契約書で確認しておきましょう。
公開後も保守が必要になる
スマホのアプリは、OSの更新に合わせた手直しが毎年のように必要になります。Appleは新しい開発環境での提出を求める期限を定期的に設けており、放置すると更新ができなくなることもあります。
この手直しは、ノーコードならツール側が引き受けてくれる部分です。受託開発では保守費として見込んでおく必要があります。
向いている会社の見分け方|7つの質問

ここまでの内容を、判断に使える質問にまとめました。当てはまるものが多いほうが、向いている作り方の目安になります。
ノーコードが向いているかを確かめる質問
質問1は「使うのは社内の人だけか」です。社内の数人から数十人で使う業務アプリなら、ノーコードの得意分野です。
質問2は「業務の流れがまだ固まっていないか」です。試しながら頻繁に変えていく段階では、自分たちで直せるノーコードが向いています。
外部に頼むたびに改修費がかかる受託開発では、小さな変更を繰り返すほど費用と時間がかさみます。変更の多さは、ノーコードを選ぶ大きな理由になります。
質問3は「Excelや紙の置き換えが主な目的か」です。入力と一覧、集計と承認が中心の業務なら、ノーコードの部品で十分に組み立てられることが多いです。
受託開発が向いているかを確かめる質問
質問4は「お客様や取引先に配るアプリか」です。利用者が多く、ストアでの公開も考えているなら、受託開発を検討する価値があります。
質問5は「独自の業務のやり方が会社の強みか」です。ツールに業務を合わせると強みが薄れてしまう場合は、自社専用に作るほうが合っています。
質問6は「5年以上使い続ける予定か」です。長く使うほど、人数課金の積み重ねや値上げの影響が大きくなります。
どちらにも関わる最後の質問
質問7は「社内に作り続けられる人がいるか」です。ノーコードでも受託開発でも、作ったあとに面倒を見る人がいなければうまくいきません。
迷ったときは、7つの質問への答えを紙に書き出し、その紙を持って相談先に見せるのが近道です。答えが半々に分かれる場合は、次の章で紹介する段階的な進め方が向いています。
迷ったときの進め方|ノーコードで試してから作る

どちらか一方に決めきれないときは、両方の良いところを順番に使う方法があります。実務でもよくおすすめしている進め方です。
段階1:今の業務を書き出す
最初にやるべきことは、ツール選びではなく業務の書き出しです。誰が、いつ、何を入力し、誰が確認しているのかを、今使っているExcelや紙をもとに整理します。
この書き出しは、ノーコードで作るときにも、開発会社に依頼するときにも、そのまま使えます。どちらを選んでも無駄にならない作業です。
段階2:ノーコードで小さく試す
次に、いちばん困っている業務だけをノーコードで作ってみます。全部を一度に置き換えず、数人で数週間使ってみるのがポイントです。
実際に使ってみると、本当に必要な機能と、なくても困らない機能がはっきりします。この経験は、受託開発に進む場合の要望の整理にもそのまま生きます。
段階3:限界が見えたら受託開発に切り替える
使う人が増えた、お客様にも配りたくなった、ツールの部品では足りなくなった。こうした限界が見えた時点で、受託開発への切り替えを検討します。
このとき、ノーコードで使っていたデータの項目と、試して分かった要望の一覧が、そのまま開発の設計図の土台になります。最初から受託開発にするより、要望のずれが少なくなるのが利点です。
補助金を使う場合は順番に注意
受託開発の費用に補助金を使いたい場合は、交付が決まる前に発注すると対象外になる制度が多くあります。制度によっては、既製のツールの導入と自社専用の開発で扱いが大きく異なります。
試作の段階から補助金の申請時期を意識しておくと、切り替えのタイミングを逃しにくくなります。

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よくある質問(FAQ)

ノーコードで作ったアプリを、あとから受託開発に移せますか?
画面や処理の仕組みをそのまま移すことは、一般的にはできません。ただしデータは書き出せることが多く、作り直しの際の土台として使えます。
試作で分かった要望の一覧があれば、作り直しの期間や費用を抑えやすくなります。移行を見込むなら、データの書き出し方法を先に確認しておきましょう。
社内にITに詳しい人がいなくてもノーコードは使えますか?
Excelで表や簡単な集計を作れる方なら、基本的な業務アプリは作れることが多いです。ツールによっては日本語の解説や講座も充実しています。
ただし、複数の業務をつなぐような作り込みになると、相応の慣れが必要です。最初は小さな業務から始めることをおすすめします。
AIに作ってもらったアプリは、そのまま業務で使っても大丈夫ですか?
試作としては十分に役立ちますが、そのまま本番で使う前には、人による確認が欠かせません。誰がデータを見られるのか、入力を間違えたときにどうなるのかといった点は、特に確かめておく必要があります。
社外の人が使うアプリや、個人情報を扱うアプリでは、専門家に中身を確認してもらうと安心です。
受託開発の費用を抑える方法はありますか?
最初に作る機能を絞ることが、最も効果のある方法です。必須の機能だけで公開し、使いながら足していく進め方なら、初期費用を抑えられます。
要望を整理した資料を用意しておくと、打ち合わせの回数が減り、見積りの精度も上がります。
ホームページ制作の会社にアプリ開発も頼めますか?
会社によって対応範囲は異なります。業務アプリやスマホアプリの開発実績があるか、公開後の保守まで任せられるかを確認するとよいでしょう。
ホームページとアプリを同じ会社に任せると、集客の導線やデータのつなぎ方を一体で考えやすくなります。
まとめ|自社の「使う人」と「使う期間」で選ぶ

ノーコードと受託開発は、どちらが上というものではなく、向いている場面が違う作り方です。社内の少人数で使い、業務を試しながら変えていく段階ならノーコード、お客様に配るアプリや長く使う独自の仕組みなら受託開発が向いています。
費用は初期費用だけでなく、3〜5年の合計で比べてください。ノーコードは人数と料金改定、受託開発は保守費を忘れずに見込むことが大切です。
迷う場合は、業務の書き出し、ノーコードでの小さな試作、限界が見えたら受託開発へという順番で進めると、どちらに転んでも無駄が出にくくなります。まずは今の業務を紙に書き出すところから始めてみましょう。
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Webサイト制作歴10年以上の経験を元にSEOコンサルティングを行い、延べ1,000件以上のサポート実績を誇ります。個人事業主や中小企業向けのホームページ制作やSEOコンサルティングを得意としています。
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