アプリ開発

アプリ開発を外注する流れ|相談から公開までの手順と期間

記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司

「アプリを作りたいけれど、どこに何を頼めばいいのか分からない」「相談してから公開まで、どんな順番で進むのか知りたい」。中小企業の経営者の方から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。

業務のアプリ化は、外注先に丸ごと任せれば完成するものではありません。発注する側が決めること、確認すること、用意するものが工程ごとにあり、そこを知らないまま進めると、予算や期間が膨らむ原因になります。

この記事では、アプリ開発を外注するときの流れを「相談前の準備」から「ストアでの公開」「公開後の保守」まで順番に解説します。AppleとGoogleの公式情報、情報処理推進機構(IPA)のモデル契約、2025年末から2026年にかけてのストアや法制度の変更点も踏まえてまとめました。

筆者は全日本SEO協会認定SEOコンサルタントとして、Web制作とSEOに10年以上携わり、延べ1,000件以上のご相談に対応してきました。その中で見てきた「発注側がつまずきやすい場面」も交えてお伝えします。

目次

アプリ開発の外注はどう進む?全体の流れと期間の目安

机から公開までの道のりを人が歩いて進む、アプリ開発の全体の流れのイラスト

まずは全体像をつかみましょう。アプリ開発の外注は、大きく分けると6つの段階で進みます。

外注の流れは6つの段階に分かれる

一般的な流れは「相談前の準備」「相談・見積り」「要件定義と契約」「設計・開発」「テスト」「ストア公開と保守」の6段階です。会社によって呼び方は違いますが、やることの順番はほぼ共通しています。

発注する側がもっとも時間を使うべきなのは、最初の準備と要件定義の段階です。ここで決めた内容が、見積り・開発期間・完成後の使い勝手のすべてを左右します。

期間の目安は「開発」より「準備と審査」で変わる

開発そのものにかかる期間は、機能の数や画面の数によって大きく変わります。一方で見落とされがちなのが、開発の前後にかかる待ち時間です。

例えば、社内での要件の取りまとめ、ストアに登録するための開発者アカウントの取得、公開前の審査などは、開発会社の努力だけでは短縮できません。期間を見積もるときは、こうした待ち時間も含めて考えることが大切です。

発注側と開発会社の役割分担

アプリ開発では、開発会社が設計とプログラムを担当し、発注側は「何を作るか」を決めて確認する役割を担います。業務の流れを一番よく知っているのは発注側なので、ここを開発会社に任せきりにすることはできません。

具体的には、業務の説明、画面イメージの確認、テストでの動作確認、ストアに載せる説明文や画像の準備などが発注側の仕事になります。打ち合わせに出る担当者と、最終判断をする決裁者を最初に決めておくと、途中の手戻りが減ります。

相談前に準備しておくこと|目的・業務・予算を整理する

机に書類を並べて業務と予算を整理する経営者のイラスト

開発会社に相談する前に、社内で整理しておくと話が早く進む項目があります。完璧な資料は必要ありませんが、次の3点は言葉にしておきましょう。

アプリで解決したい課題を1つに絞る

「売上を上げたい」「業務を効率化したい」のような大きな目標だけでは、作るべき機能が決まりません。「紙の日報をやめたい」「電話の予約受付を減らしたい」のように、解決したい困りごとを具体的な1つに絞ることが出発点です。

最初のリリースで解決する課題を1つに絞ると、費用と期間を抑えやすくなります。あれもこれもと機能を足すほど、開発費も確認の手間も増えていきます。

今の業務の流れを書き出す

次に、アプリで置き換えたい業務が今どのように回っているかを書き出します。誰が、いつ、何を見て、どこに記録しているかを、紙やExcelの実物と一緒に整理しておくと伝わりやすくなります。

開発会社はこの情報をもとに画面や機能を考えます。例外的な対応やよくあるトラブルも書き添えておくと、後から「その場合はどうするのか」という確認が減ります。

予算と希望時期の幅を決めておく

予算は「上限いくら」と1つの数字で決めるより、「この範囲なら検討できる」という幅で伝えるほうが、現実的な提案を受けやすくなります。開発費だけでなく、公開後の保守費用やサーバー費用も別にかかる前提で考えておきましょう。

希望時期も同様です。展示会や繁忙期など動かせない日付がある場合は、その理由も含めて最初に伝えておくと、開発会社が逆算して工程を組めます。

市販ツールで足りないかも確認しておく

相談の前に、市販の予約サービスや業務アプリ、ノーコードツールで用が足りないかも一度確認しておくと判断がしやすくなります。既製品で十分な場合、独自のアプリを作るより早く安く始められることがあります。

反対に、既製品を試して「ここが合わない」と分かったことは、そのまま独自開発の要件になります。試した結果のメモも、相談のときの大事な材料です。

相談・見積り・契約|要件定義は準委任が基本

契約書を前に握手する発注者と開発会社のイラスト

準備ができたら、開発会社に相談して見積りを依頼します。この段階では、見積りの読み方と契約の形を理解しておくことが重要です。

最初の見積りは「概算」と考える

相談の初期に出てくる見積りは、多くの場合「概算」です。この時点では作る内容がまだ固まっていないため、金額にある程度の幅があるのは自然なことです。

概算の金額だけで開発会社を比べると、後から追加費用が出やすくなります。どの機能が含まれていて、どこから先が別料金なのかを、見積書の内訳で確認しておきましょう。

要件定義で「何を作るか」を文書にする

要件定義とは、アプリに持たせる機能や画面、使う人、扱うデータなどを決めて文書にする工程です。ここで決めた内容が、正式な見積りと開発の土台になります。

要件定義の打ち合わせは、発注側の担当者が業務の説明をする場でもあります。完成後に「思っていたものと違う」とならないよう、画面のイメージ図などで具体的に確認しながら進めることが大切です。

IPAのモデル契約にみる契約の分け方

情報処理推進機構(IPA)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」は、2020年12月に公開されたシステム開発の契約のひな型です。工程ごとに契約を分ける「多段階契約」の考え方が採られています。

このモデルでは、要件定義は「準委任」、内部設計から結合テストまでは「請負」とされ、外部設計は案件に応じてどちらかを選ぶ形になっています。準委任は作業の遂行に対して報酬を払う契約、請負は完成した成果物に対して報酬を払う契約です。

要件が固まる前に、開発の全部を一括の請負で契約すると、追加費用をめぐる行き違いが起きやすくなります。工程ごとに見積りと契約を区切る進め方は、発注側にとっても予算の管理がしやすい方法です。

契約書で確認したい項目

契約書では、作るものの範囲、納期、支払い条件、完成後に不具合が見つかったときの対応、作ったプログラムの著作権の扱いを確認しましょう。2020年4月1日施行の改正民法では、従来の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」という考え方に置き換わっています。

法務省の説明では、契約の内容に適合しないものが引き渡された場合、修補などの追完、代金の減額、解除、損害賠償を求めることができ、種類や品質の不適合は知った時から1年以内に通知する必要があるとされています(請負契約にも同様の規定があります)。ただし契約で別の定めを置くことも多いため、具体的な条文は弁護士など専門家にご相談ください。

個人の開発者に依頼する場合の注意点

フリーランスの開発者に依頼する場合は、2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」も関係します。発注する事業者は、業務の内容や報酬の額、支払期日などを書面またはメールなどで明示する必要があります。

従業員を雇っている発注事業者は、成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間内に支払期日を定めることなども求められます。対象となる取引の範囲は公正取引委員会の資料で確認し、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。

料金の目安とシミュレーターは、アプリ開発のサービスページで公開しています。

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設計・開発・テスト|発注側がやるべきこと

スマートフォンの画面をブロックで組み立てる開発とテストのイラスト

契約が済むと、設計と開発の工程に入ります。この間も発注側の出番は多く、確認のタイミングを逃さないことが品質につながります。

画面設計の段階で使い勝手を確認する

設計の段階では、画面の並びやボタンの配置を示した図(ワイヤーフレーム)や試作品が示されることがあります。実際にアプリを使う現場の担当者にも見てもらい、操作の流れに無理がないか確認しましょう。

この段階での変更は、開発が進んでからの変更より手間が少なく済みます。気になる点は遠慮せずに伝えることが、結果的に費用を抑えることにもつながります。

開発中は定例の打ち合わせで進み具合を共有する

開発期間中は、週1回や隔週など、定期的に進み具合を共有する場を設けるのが一般的です。途中で動く画面を見せてもらえるかどうかも、相談の段階で確認しておくと安心です。

開発中に新しい機能を追加したくなることはよくあります。追加する場合は、費用と納期への影響を確認してから判断し、合意した内容は記録に残しておきましょう。

受け入れテストは発注側の大事な仕事

開発会社が行うテストのあと、発注側が実際の業務の流れに沿って動作を確かめる工程を「受け入れテスト」と呼びます。実際のデータに近い内容を入れて、普段の業務がアプリで回るかを確かめます。

受け入れテストで確認した項目は、チェック表にして記録しておくと、不具合の報告と修正の確認がスムーズになります。確認する端末の機種やOSのバージョンも、あらかじめ決めておくと漏れが防げます。

AIを使った開発で確認しておきたいこと

最近は、開発会社が生成AIを使ってプログラムを書く場面も増えています。AIを使うこと自体は問題ではなく、書かれたプログラムを人が確認し、テストする体制があるかが大切です。

発注側としては、社外秘のデータをAIサービスに入力する場合の扱いや、品質を確認する工程について、契約前に質問しておくと安心です。社内でAIを使う際のルールづくりについては、別の記事でも詳しく解説しています。

ストア公開の手順|アカウント・審査・テスト期間

虫眼鏡でスマートフォンを審査する、ストア公開前の審査のイラスト

アプリが完成したら、App StoreやGoogle Playで公開します。ここには開発会社だけでは進められない手続きがあり、事前の準備が欠かせません。

開発者アカウントは自社名義で取得する

ストアでアプリを公開するには、Appleの「Apple Developer Program」とGoogleの「Play Console」の開発者アカウントが必要です。Appleの公式ページでは年間99米ドル、Googleの公式ヘルプでは25米ドルの1回払いの登録料と案内されています。

法人として登録する場合、どちらもD-U-N-S番号という企業の識別番号が必要です。Googleのヘルプでは取得に最大30日かかる場合があるとされているため、開発の途中から自社名義のアカウント取得を進めておくと公開が遅れません。

Google Playの新しい個人アカウントはテストが必要

Google Playでは、2023年11月13日より後に作られた個人の開発者アカウントの場合、本番公開の前に条件を満たすテストが求められます。公式ヘルプによると、12人以上のテスターが14日間以上続けて参加するクローズドテストを行ったうえで、本番公開へのアクセスを申請する流れです。

法人アカウントで公開する場合も、社内の数人に事前に使ってもらうテスト期間を設けておくと、公開後の不具合を減らせます。テストに協力してもらう社員やお客様を、早めに決めておきましょう。

審査にかかる期間と、落ちたときの対応

Appleの公式ページでは、提出されたアプリの90%が平均して24時間以内に審査されると案内されています。一方Googleの公式ヘルプでは、一部のアプリや開発者アカウントでは審査が長くなり、最長7日、例外的にはそれ以上かかる場合があるとされています。

審査で指摘を受けた場合は、内容を修正して再提出します。審査に必ず通る、何日で公開できると約束することは誰にもできないため、公開日は余裕を持って設定し、宣伝や告知の日程もそれに合わせて組みましょう。

ストアに載せる説明文と画像を準備する

ストアの掲載ページには、アプリの名前、説明文、スクリーンショット、プライバシーポリシーのURLなどが必要です。これらは発注側の事業の言葉で書くべき内容なので、開発会社と分担を決めて早めに準備しましょう。

Appleは2025年7月に年齢区分を見直し、13歳以上・16歳以上・18歳以上の区分を新設しました。新しい質問への回答期限は2026年1月31日とされていたため、既存のアプリがある会社は回答が済んでいるか確認しておくと安心です。

公開後の保守・運用|2026年に増えた確認事項

レンチを持った技術者と盾・サーバーで表した公開後の保守のイラスト

アプリは公開して終わりではありません。OSの更新やストアのルール変更に合わせて、手を入れ続ける必要があります。

保守契約で決めておく範囲

公開後の不具合修正、OSの新しいバージョンへの対応、サーバーの監視、問い合わせ対応などを、保守契約でどこまでカバーするかを決めておきましょう。開発の契約とは別に、月額などで結ぶことが一般的です。

保守の範囲があいまいなままだと、OSの更新でアプリが動かなくなったときに、費用の負担をめぐって話がまとまらないことがあります。どの作業が保守の範囲内で、どこから別料金になるのかを文書にしておくと安心です。

Androidの開発者認証が海外で始まった

Googleは、認定を受けたAndroid端末にインストールされるアプリについて、開発者の本人確認を求める「開発者認証」を進めています。Androidの公式情報によると、2026年9月30日にブラジル、インドネシア、シンガポール、タイで始まり、2027年に全世界へ広げる予定とされています。

Google Playで配布しているアプリの多くは自動で登録されるとされていますが、Play Consoleで自社アプリの状態を確認しておくと安心です。日本は2026年10月時点では先行対象の4か国に含まれていないため、今後の案内を保守の担当者と一緒に追いかけていきましょう。

スマホ新法でアプリの配布方法が広がった

日本では「スマホソフトウェア競争促進法」が2025年12月18日に全面施行されました。これを受けてAppleは、日本向けにApp Store以外のアプリマーケットでの配布や、アプリ内課金以外の決済方法などを認める変更を発表しています。

ただし、すべての会社が新しい配布方法を使う必要はありません。業務アプリや自社のお客様向けアプリであれば、まずは従来どおりのストアでの公開を基本に考え、手数料や条件は公開前に各社の公式ページで確認しましょう。

公開後の改善と集客

公開後は、利用状況を見ながら使いにくい部分を改善していきます。社員向けのアプリなら現場の声を、お客様向けのアプリならストアのレビューや問い合わせ内容を定期的に確認しましょう。

お客様向けのアプリは、公開しただけでは使ってもらえません。ホームページやGoogleビジネスプロフィール、店頭での案内など、すでにある接点から自然にアプリへ誘導する導線を作ることが大切です。

よくある質問(FAQ)

相談カウンターで質問に答える担当者のイラスト

相談の段階で費用はかかりますか?

多くの開発会社では、最初の相談や概算の見積りは無料で受け付けています。ただし、詳しい要件定義の作業は有料の契約として進めることが一般的です。

どこまでが無料で、どこから費用が発生するのかは、相談の最初に確認しておくと安心です。

仕様書がなくても相談できますか?

仕様書がなくても相談はできます。今の業務で使っている紙の帳票やExcelのファイル、困っていることのメモがあれば、それをもとに要件を一緒に整理していく進め方が一般的です。

大事なのは、何に困っていて、アプリでどうなってほしいかを言葉にしておくことです。

途中で仕様を変えることはできますか?

変更はできますが、工程が進むほど影響が大きくなり、費用や納期に跳ね返ります。変更したくなったら、まず開発会社に影響の範囲を見積もってもらってから判断しましょう。

合意した変更の内容は、メールや議事録などで記録に残しておくことが大切です。

iPhoneとAndroidの両方で公開する必要がありますか?

利用者が限られる社内向けのアプリなら、社員が使っている端末に合わせて片方だけで始める選択もあります。お客様向けのアプリでは、両方に対応するのが一般的です。

両方に対応する場合でも、1つのプログラムで両方のアプリを作る方法を使えば、費用を抑えられることがあります。

公開できる日を約束してもらえますか?

ストアの審査はAppleとGoogleが行うため、開発会社が公開日を約束することはできません。開発の完了予定日と、審査の待ち時間を分けて考えるのが現実的です。

告知やキャンペーンを予定している場合は、審査で指摘を受けて再提出する可能性も見込んで、余裕を持った日程を組みましょう。

まとめ|アプリ開発の外注は「準備」と「確認」で決まる

打ち合わせの机から公開用の台に置かれたスマートフォンへ階段が続くアイソメトリックイラスト

アプリ開発の外注は、相談前の準備、見積りと要件定義、契約、設計・開発・テスト、ストア公開、公開後の保守という順番で進みます。どの工程にも発注側の役割があり、任せきりにしないことが成功への近道です。

契約では、要件定義を準委任、開発を請負と工程ごとに分ける考え方が、IPAのモデル契約でも示されています。改正民法の契約不適合責任や、個人に依頼する場合のフリーランス法など、確認すべきルールも押さえておきましょう。

ストアでの公開には、自社名義の開発者アカウントやD-U-N-S番号、審査の待ち時間が関わります。2026年はAndroidの開発者認証やスマホ新法など、公開後の環境も変わり続けているため、保守の体制まで含めて計画することが大切です。

まずは今日、アプリで解決したい困りごとを1つだけ書き出してみてください。その1行が、開発会社への相談をもっとも早く前に進める材料になります。

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