記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
「アプリが完成して公開できたのに、毎月の保守費用の見積りが届いて驚いた」というご相談をいただくことがあります。開発費には目が行きやすい一方で、公開後にかかるお金は事前に説明を受けていないケースが少なくありません。
一方で「保守契約は本当に必要なのか」「月額で具体的に何をしてもらえるのか」がよく分からないまま、なんとなく契約を続けている会社もあります。保守の中身が見えないと、費用が高いのか安いのかも判断できません。
この記事では、全日本SEO協会認定SEOコンサルタントとして、Web制作10年以上・延べ1,000件以上のサイトに関わり、自社でもアプリを開発・公開してきた筆者が、アプリの保守費用の相場と内訳を整理します。
AppleとGoogleが毎年求めてくる対応など、2026年の最新ルールもあわせて解説しますので、見積りを見比べるときの物差しとしてお使いください。
アプリの保守とは?運用との違いを整理

保守は「アプリを使える状態に保つ」仕事
アプリの保守とは、公開したアプリが問題なく動き続けるように、不具合の修正や環境の変化への対応を行う仕事です。家や車と同じで、作った時点がゴールではなく、使い続けるための手入れが必要になります。
アプリは公開した瞬間から、OSの更新やストアのルール変更によって少しずつ「古く」なっていきます。何もしなければ動かなくなる可能性がある、という点がホームページとの大きな違いです。
保守と運用の違い
保守と並んでよく使われる言葉に「運用」があります。一般的に、保守はアプリそのものを修正・改修する作業、運用はアプリを日々動かすための作業を指します。
運用には、サーバーの監視、データのバックアップ、利用者からの問い合わせ対応、お知らせの配信などが含まれます。見積書では「保守運用費」とまとめて書かれることが多いため、どちらがどこまで含まれているかを確認することが大切です。
保守の主な種類
ソフトウェア保守の国際規格(ISO/IEC/IEEE 14764、日本ではJIS X 0161)では、保守をいくつかの種類に分けて整理しています。昔から使われてきたのが是正保守・予防保守・適応保守・完全化保守の4分類で、現行の版ではさらに追加保守と緊急保守も定義されています。
是正保守は見つかった不具合を直すこと、予防保守は不具合になる前に潜在的な問題を手当てすることです。適応保守はOSの更新や法改正などの環境変化に合わせる改修、完全化保守は性能や保守のしやすさを高める改善を指します。
中小企業のアプリで特に費用がかかりやすいのは、このうちの適応保守です。自社では何も変えていなくても、外側の環境が変わるために対応が必要になるからです。
保守がないとどうなるか
保守契約を結ばずにアプリを放置すると、ある日突然ログインできなくなったり、新しいスマートフォンで画面が崩れたりすることがあります。そのときになって慌てて依頼しても、開発時の担当者がいない、ソースコードの所在が分からないといった理由で対応に時間がかかりがちです。
保守は「何か起きたら直す」だけでなく、「何も起きないようにしておく」ための備えでもあります。この視点を持つと、月額費用の意味が見えやすくなります。

アプリに保守が欠かせない理由|毎年変わるストアのルール

Appleは毎年、開発環境の更新を求めてくる
iPhoneアプリについて、Appleは開発者向けサイトの「Upcoming Requirements(今後の要件)」で、毎年のように新しい条件を公表しています。2026年4月28日以降、App Store Connectにアップロードするアプリは、Xcode 26以降とiOS 26などのSDK(開発キット)でビルドすることが必須になりました。
これは、アプリを更新しようとすると要件を満たす新しい開発環境でビルドし直す必要がある、という意味です。古い環境のまま放置したアプリは、不具合を1か所直すだけでも、まず開発環境の移行作業から始めなければなりません。
同じページでは、2026年9月9日以降にアップロードするiOS・iPadOSアプリはiOS 13以降を対象にすることや、年齢区分の新しい質問への回答期限(2026年1月31日)も示されていました。こうした通知に気づいて対応するのも、保守の大切な役割です。
Google Playは「対象APIレベル」を毎年引き上げる
Androidアプリでは、Google Playが「対象APIレベル」という基準を毎年引き上げています。Android Developersの公式ページによると、2026年8月31日以降、新しいアプリとアップデートはAndroid 16(APIレベル36)以上を対象にする必要があります。
既存のアプリも、Android 15(APIレベル35)以上を対象にしていないと、それより新しいAndroidを使う新規ユーザーには表示されなくなります。期限の延長を申請した場合でも、猶予は2026年11月1日までとされています。
つまりAndroidアプリは、おおむね毎年、対象APIレベルを上げる更新をしないと、新しいAndroidを使う利用者に届かなくなる仕組みです。保守費用の中には、この定期的な対応の費用が含まれていると考えてください。
開発者アカウントの維持にもお金と手間がかかる
App Storeでアプリを配信するには、Apple Developer Programへの登録が必要で、メンバーシップは年会費制です。Appleの公式ヘルプでは、メンバーシップが失効するとアプリは新たにダウンロードできなくなり、新しいアプリやアップデートも提出できなくなると説明されています(すでに入れている利用者は引き続き使えます)。
Google Playの開発者登録料は25米ドルの1回払いですが、アカウント情報の確認やポリシー違反の通知への対応は継続して必要です。誰がアカウントを管理し、更新の連絡を受け取るのかを、保守契約の中で決めておくと安心です。
セキュリティ対策は待ってくれない
アプリが使っている部品(ライブラリ)やサーバーのソフトウェアには、後から脆弱性(セキュリティ上の弱点)が見つかることがあります。脆弱性が公表されると攻撃に悪用されることもあるため、早めの更新が欠かせません。
特に顧客の個人情報や予約情報を扱うアプリでは、情報漏えいが起きたときの影響が大きくなります。筆者もWordPressサイトの保守で脆弱性への対応を数多く行ってきましたが、アプリでも考え方は同じです。

アプリの保守費用の相場|年間で開発費の15%前後が目安

よく使われる目安は「開発費の15%前後」
アプリの保守費用について、発注先比較サービスのアイミツの解説記事では、年間の運用・保守費用は開発費用の約15%が目安と紹介されています(比較ビズもシステム保守費用の目安として15%程度を挙げています)。たとえば開発費が500万円なら、年間75万円前後、月額にすると6万円強という計算です。
ただし、どちらの記事でも根拠となる調査データは示されておらず、あくまで業界でよく使われる目安です。15%という数字は「上限」でも「下限」でもなく、見積りを比べる出発点として使うのが現実的です。
費用が大きく変わる3つの要因
保守費用は、主に「対応する範囲」「対応のスピード」「アプリの複雑さ」の3つで変わります。不具合の修正だけを受けるのか、OS対応や機能の小さな改修まで含めるのかで、必要な作業時間が大きく変わるからです。
対応のスピードも重要です。平日の日中に翌営業日までに返事をする契約と、24時間365日で1時間以内に対応する契約とでは、待機する人員の数がまったく違います。
アプリの複雑さも費用に影響します。決済や外部サービスとの連携、管理画面など、つながっている仕組みが多いほど、OSや外部サービスの変更に合わせた確認作業が増えます。
iPhoneとAndroidの両方に出すと保守も2倍に近づく
iPhoneとAndroidの両方でアプリを配信する場合、AppleとGoogleそれぞれのルール変更に対応する必要があります。最近は1つのコードで両方のアプリを作る方法も一般的ですが、それでもストアごとの審査や設定は別々に発生します。
社内の業務で使うアプリであれば、まずは片方のOSに絞る、あるいはブラウザで使うWebアプリにするという選択肢もあります。アプリを作る前の段階で保守費用まで含めて比べておくと、後から負担に驚かずに済みます。

ホームページの保守費用との違い
ホームページの保守費用は、更新作業やサーバー管理が中心で、比較的少ない金額から依頼できることが多いものです。一方アプリは、OSやストアのルール変更への対応が毎年発生するため、同じ規模でも保守の作業量が多くなりがちです。
すでにホームページの維持費を把握している会社は、その感覚のままアプリの保守費用を見積もると、少なく見積もってしまうことがあります。両者は別物として考えるのがおすすめです。

保守費用の内訳|月額に含まれるもの・含まれないもの

月額に含まれることが多い作業
保守の月額費用に含まれることが多いのは、軽微な不具合の修正、OSの更新後の動作確認、ストアのルール変更への対応、問い合わせへの回答などです。サーバーの監視や定期的なバックアップを含める会社もあります。
同じ「月額保守」という名前でも、含まれる作業は会社によってまったく違います。見積書に作業項目が書かれていない場合は、一覧にしてもらうよう依頼しましょう。
別料金になりやすい作業
規格上は機能の追加も保守に含まれますが、契約の実務では、新しい機能の追加、画面デザインの変更、大規模なOSアップデートに伴う作り直しは、月額とは別に見積りになるのが一般的です。保守はあくまで「今のアプリを保つ」作業で、「アプリを育てる」作業は改修として扱われることが多いからです。
月額の中に「月○時間まで」の作業枠を設け、それを超えた分を追加料金とする契約もあります。どこからが別料金になるのか、境目を契約前に確認しておくことが大切です。
保守費用とは別にかかる運用コスト
保守費用とは別に、サーバーやデータベースの利用料、ドメインやSSL証明書の費用、Appleの年会費などがかかります。これらは開発会社を通して支払う場合と、自社で直接契約する場合があります。
最近は、アプリの中でAIを使う機能も増えています。AIのAPI利用料は使った量に応じて変わるため、毎月の上限設定や利用状況の確認方法を決めておきましょう。

見積書で内訳を確認するコツ
見積書を受け取ったら、「保守」「運用」「インフラ(サーバーなど)」「外部サービス利用料」の4つに分けて書き直してみることをおすすめします。こうすると、どの費用が作業の対価で、どの費用が実費なのかがはっきりします。
実費の部分は、自社で直接契約すれば手数料分が下がる場合もあります。ただし、障害が起きたときの窓口が分かれるという面もあるため、管理のしやすさと合わせて判断してください。
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保守契約の種類と料金体系

定額型(月額固定)
定額型は、毎月決まった金額で、決められた範囲の作業を行う契約です。毎月の支出が読みやすく、ちょっとした不具合でも気軽に相談しやすいのが利点です。
一方で、作業がほとんどない月も費用がかかります。月ごとの作業内容を報告してもらう約束をしておくと、費用に見合った対応がされているかを確認できます。
チケット型・時間契約型
チケット型は、あらかじめ作業時間をまとめて購入し、依頼のたびに消化していく契約です。依頼が少ないアプリでは、定額型より総額を抑えられることがあります。
ただし、急ぎの依頼に対応してもらえるかどうかは、契約内容によって変わります。チケットの有効期限や、緊急時の対応の扱いを確認しておきましょう。
スポット型(都度依頼)
スポット型は、必要なときにその都度見積りを取って依頼する方法です。固定費はかかりませんが、毎年のOS対応やストアのルール変更を自社で把握しておく必要があります。
社内に詳しい担当者がいない場合、スポット型だけで運用すると、対応の期限に気づかず更新できなくなるリスクがあります。少なくとも「通知を見て知らせてもらう」部分だけは継続的に依頼する方法もあります。
対応時間と復旧の目安を決めておく
保守契約では、問い合わせへの対応時間や、障害が起きたときにどれくらいで復旧を目指すかを取り決めることがあります。こうした取り決めはSLA(サービス品質の合意)と呼ばれます。
中小企業のアプリであれば、平日の営業時間内の対応で十分なことも多いものです。予約アプリなど止まると売上に直結するものだけ、休日の対応を追加するという考え方もあります。
保守費用を抑える5つの方法

開発の段階から保守のしやすさを考える
保守費用を左右するのは、実はアプリを作る段階の設計です。コードが整理されている、設計書が残っている、自動テストがあるといったアプリは、OS対応のたびにかかる確認作業が少なくて済みます。
開発の見積りを比べるときは、金額だけでなく「保守のしやすさ」にどれだけ配慮しているかも聞いてみてください。結果として、数年単位の総額では安くなることがあります。
機能を絞って小さく始める
機能が多いほど、OSやストアのルールが変わったときに確認する箇所が増えます。最初から全部入りのアプリを作るより、よく使う機能に絞って公開し、使われ方を見てから追加する方が保守の負担も軽くなります。
あまり使われていない機能は、思い切って削除するのも選択肢です。機能を減らすことも、保守費用を下げる立派な改修です。
ソースコードと管理権限を自社で持つ
アプリのソースコード、ストアのアカウント、サーバーの管理権限が開発会社だけにあると、保守先を変えたくても変えられない状態になりがちです。契約時に、ソースコードの著作権や引き渡しの条件を確認しておきましょう。
ストアのアカウントは、できれば自社名義で取得し、開発会社には必要な権限だけを付与するのがおすすめです。契約内容の判断に迷う場合は、弁護士など専門家にご相談ください。

ストアからの通知を社内で受け取る
AppleやGoogleからのルール変更の通知は、主にアカウントに登録した担当者のメールアドレスに届きます。開発会社任せにせず、社内の担当者にも届くようにしておくと、対応漏れを防げます。
通知の内容がよく分からなくても、「このメールは対応が必要ですか」と開発会社に転送するだけで十分です。早めに相談すれば、ほかの改修とまとめて対応でき、費用を抑えられることもあります。
アプリでなくてもよいか見直す
社内向けの業務ツールであれば、スマートフォンのアプリにせず、ブラウザで使うWebアプリにすることで、ストアの審査や毎年のルール変更への対応が不要になる場合があります。紙やExcelの業務を置き換えるだけなら、市販のクラウドサービスで足りることもあります。
目的に対して最も保守の負担が少ない方法を選ぶことが、結果的にいちばんのコスト削減になります。

保守契約の前に確認したい7つのチェックポイント

作業範囲と別料金の境目
1つめは、月額に含まれる作業と別料金になる作業の境目です。「軽微な修正」という言葉は人によって解釈が分かれるため、具体例を挙げてもらうと誤解を防げます。
2つめは、毎年のOS対応やストアのルール変更への対応が、月額に含まれるのか、毎回見積りになるのかです。ここが曖昧だと、年に1回まとまった請求が届いて驚くことになります。
対応時間・報告・連絡の方法
3つめは、問い合わせへの対応時間と連絡手段です。メールだけなのか、チャットや電話でも受け付けるのか、休日はどうなるのかを確認しましょう。
4つめは、作業の報告方法です。毎月の作業内容や時間を報告してもらえると、費用の妥当性を判断しやすくなります。
権限・データ・契約終了時の扱い
5つめは、ソースコードやストアのアカウント、サーバーの権限が誰にあるかです。6つめは、契約を終了するときに資料やデータをどのように引き継いでもらえるかです。
7つめは、契約期間と解約の条件です。1年ごとの自動更新なのか、何か月前に申し出れば解約できるのかを確認しておきましょう。
チェックポイントを一覧にする
7つのチェックポイントは、作業範囲、OS・ストア対応の扱い、対応時間と連絡手段、報告方法、権限の所在、契約終了時の引き継ぎ、契約期間と解約条件です。これを一覧にして、複数の会社の見積りを並べると比較しやすくなります。
金額が安くても、権限が開発会社にしかない、報告がないといった契約は、長い目で見ると負担が大きくなることがあります。費用と中身をセットで比べることが大切です。
よくある質問(FAQ)

保守契約を結ばないとどうなりますか?
保守契約がなくてもアプリがすぐに止まるわけではありませんが、OSの更新やストアのルール変更に対応できず、徐々に使えない端末が増えたり、アップデートを出せなくなったりする可能性があります。
不具合が起きたときにも、その都度依頼先を探す必要があり、対応に時間がかかりがちです。少なくとも、ストアからの通知の確認と年1回のOS対応は、継続して依頼先を決めておくことをおすすめします。
保守費用の相場は月額いくらですか?
よく使われる目安は、年間で開発費用の15%前後です。開発費が300万円なら年間45万円前後、月額にすると4万円弱が1つの目安になります。
ただし、対応範囲やスピード、アプリの複雑さによって大きく変わり、根拠となる公的な統計もありません。見積りを比べるときの出発点として使ってください。
開発した会社以外に保守を頼めますか?
ソースコードや設計資料、ストアやサーバーの権限を引き継げれば、ほかの会社に保守を依頼することは可能です。ただし、引き継ぎ先がコードを読み解く期間が必要になるため、最初は調査費用がかかることが一般的です。
開発会社との契約で、ソースコードの著作権や引き渡しの条件がどうなっているかを確認しておきましょう。
AppleやGoogleの新しいルールには毎年対応が必要ですか?
はい、Appleは開発環境(SDK)の最低要件を、Google Playは対象APIレベルを、ほぼ毎年引き上げています。2026年はAppleがXcode 26以降でのビルドを4月28日から、Googleが新規アプリとアップデートのAndroid 16対応を8月31日から求めています。
対応しないと、アップデートを出せなくなったり、新しい端末の利用者に表示されなくなったりします。そのため、毎年の対応を保守の計画に組み込んでおくことが大切です。
保守費用は経費になりますか?
一般的に、不具合の修正やOS対応のように現状を維持するための保守費用は、その期の費用として扱われることが多いとされています。一方、新しい機能の追加など価値を高める改修は、資産として計上する必要がある場合もあります。
会計処理は会社の状況によって異なるため、具体的な判断は税理士など専門家にご相談ください。
まとめ|アプリは公開してからが本番

アプリの保守は、不具合を直すだけでなく、毎年変わるOSやストアのルールに合わせてアプリを使える状態に保つための仕事です。2026年もAppleはXcode 26以降でのビルドを、GoogleはAndroid 16への対応を求めており、こうした対応は今後も毎年続きます。
保守費用の目安は、年間で開発費の15%前後とよく言われますが、対応範囲やスピードによって大きく変わります。月額に含まれる作業と別料金の境目、権限の所在、契約終了時の引き継ぎをセットで確認することが大切です。
まずは今のアプリについて、ストアからの通知が誰に届いているかを確認することから始めてみてください。それだけでも、対応漏れによるトラブルを防ぎやすくなります。
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記事執筆・株式会社アクセス・リンク 代表取締役
Webサイト制作歴10年以上の経験を元にSEOコンサルティングを行い、延べ1,000件以上のサポート実績を誇ります。個人事業主や中小企業向けのホームページ制作やSEOコンサルティングを得意としています。
(社)全日本SEO協会 認定SEOコンサルタント
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