「昨日まで検索結果に出ていた自社サイトの重要なページが、今日は見当たらない」。そんな相談が、じわじわと増えています。
原因はGoogleのアルゴリズム変動ではなく、第三者による虚偽の「DMCA削除申請(著作権侵害の申し立て)」であるケースがあるのです。
本来は著作権者を守るための正当な仕組みが、いまや競合サイトを検索結果から消し去る「ネガティブSEO」の道具として悪用されはじめています。2026年に入り、海外の大手メディアでも正規の記事が次々と削除される事態が起きました。
この記事では、DMCA削除申請の悪用がなぜ起きるのかという仕組みから、実際に何が起きているのか、そして中小企業が自社サイトを守るために今できる確認方法と対処手順までを、順を追って解説します。読み終えるころには、「万が一ページが消えても、被害を最小限に抑えて取り戻す」ための具体的な行動がわかるはずです。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
DMCA削除申請の悪用とは?なぜ今問題になっているのか

まずは「DMCA削除申請」という制度そのものと、それがどうして悪用されるようになったのかを整理しておきましょう。仕組みを理解しておくと、いざ自社が巻き込まれたときにも冷静に対処できます。
DMCA削除申請の基本的な仕組み
DMCAとは、アメリカのデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)の略称です。自分の著作物が無断でコピーされていると考える人は、この法律にもとづき、Googleに対して「該当ページを検索結果から削除してほしい」と申請できます。
Googleは専用の申請フォーム(reportcontent.google.com/forms/dmca_search)を用意しており、世界中から著作権侵害の申し立てを受け付けています。DMCAはアメリカの法律ですが、Google検索からの削除は世界共通の窓口で処理されるため、日本のサイトも例外なく標的になり得ます。
申請が受理されると、対象ページはGoogle検索の結果から「非表示(インデックスからの除外ではなく検索結果からの削除)」になります。ページ自体はサーバー上に残っていても、検索でたどり着けなくなるため、集客という観点では公開していないのと同じ状態に陥ります。
Googleは自社の透明性レポートの中で、申請者が不正確な情報を提出する場合があること、申請内容の正確性を常に検証できるわけではないこと、そして削除の前にサイト運営者へ必ず通知できるとは限らないことを明記しています。つまり制度上、「まず削除し、争いは後から」という流れが起こりうる構造になっているのです。
この「まず削除、争いは後から」という順序が、悪用のつけ入る隙になります。削除された側は、後述する反対通知という手続きを踏まなければ元に戻せません。
申請する側の負担が軽く、申請される側の負担が重いという非対称な構造が、この問題の根っこにあると理解しておきましょう。
本来の制度が「ネガティブSEOの武器」に変わった
問題は、この申請のハードルが極端に低いことにあります。虚偽の申請を出すのに数分しかかからず、提出者の身元確認も厳密には行われないと指摘されています。
悪意ある人物が「このページは自分の著作物を盗んでいる」と偽って申請するだけで、無関係な正規ページが検索から消えてしまう余地があるのです。
海外のSEO専門家からは、「2026年に検索で勝つ最も手軽な方法は、競合を偽のDMCAで攻撃することだ」という皮肉すら語られています。正規のコンテンツを持つ真面目な事業者ほど、こうした攻撃の被害者になりやすいという、本末転倒な状況が生まれています。
これは新しい手口というわけではありません。競合を検索順位で不利にする「ネガティブSEO」の一種として、偽の削除申請は以前から存在していました。
ただ、AI検索やゼロクリック化で一つひとつのページの価値が高まった今、その被害の重さが以前とは比べものにならなくなっているのです。

2026年、実際に何が起きているのか

「そんなことが本当に起きるのか」と思われるかもしれません。しかし2026年に入ってから、実名で報じられた被害事例がいくつも出ています。
ここでは代表的なケースと、Googleの対応状況を見ていきましょう。
大手メディアでも正規コンテンツが消えた
イギリスのメディア専門誌プレスガゼット(Press Gazette)は、2026年に同じ調査報道シリーズの記事を二度も検索結果から削除される被害に遭いました。3月には元の調査記事が、6月にはその続報が、いずれも匿名の申請によって消されたと報じています。
驚くのは、削除の根拠として挙げられた「盗まれた元の著作物」が、まったく無関係の内容だった点です。3月の申請では2024年の別のテック系サイトの記事が、6月の申請では削除済みのオンラインカジノに関する投稿が根拠とされていました。
どちらも報道内容とは何の関係もありません。
被害はプレスガゼットだけではありません。SEO業界の有力メディアであるSearch Engine Landや、著名なSEOツール企業Mozも、過去に同様の虚偽申請で記事を検索から消された経験を公表しています。
規模や知名度に関係なく、どんなサイトでも標的になり得ることを、これらの事例は示しています。
Googleも認識、それでも止められない理由
Googleは、悪用や不正確と判断した申請は拒否していると説明しています。実際、他社の削除窓口と比べれば、Googleは疑わしいDMCA申請をより積極的にはねのけているという評価もあります。
2023年には、DMCA制度を悪用する業者に対してGoogleが訴訟を起こしたこともありました。
それでも被害が後を絶たないのは、DMCAという法律の構造上、Googleが著作権の有無そのものを判断する立場にないためです。申請を受けた時点で形式的な要件を満たしていれば、いったん削除に応じざるを得ない場面があり、その正当性を争う負担はサイト運営者側に回されます。
実際、明らかに無関係な内容を根拠にした申請が、Googleの確認をすり抜けて通ってしまう例も報告されています。あるSEO専門家は、内容を見れば筋が通らないはずの削除が実行されたことに驚いたと述べています。
判断材料が申請書の記載に依存する以上、巧妙に体裁を整えた虚偽申請を完全に見抜くのは難しいのが現実です。
過去には、DMCAとは別のツールで似た問題も起きています。2025年8月には、一般公開されているURL削除ツールの不具合を突かれ、あるサイトが公開中の記事を400本以上も勝手にインデックスから外される事件がありました。
当時Googleは「その削除を防ぐ手立てがなかった」と認めています。削除系のツールは、目的外の攻撃に転用されやすいという共通した弱点を抱えているのです。

中小企業サイトが受ける被害の深刻さ

大手メディアの事例は目立ちますが、より深刻なのはむしろ中小企業です。専任の担当者がいない、監視の仕組みがないといった事情から、被害に気づくのが遅れやすいからです。
ここでは中小企業ならではのリスクを掘り下げます。
検索結果から消えることの直接的な損失
問い合わせや売上を生んでいる重要なページが検索から消えれば、その間の集客はほぼゼロになります。とくに指名検索やサービス名での検索から流入を得ていた場合、そのページが消えた瞬間に見込み客との接点が断たれてしまいます。
厄介なのは、復活までに時間がかかることです。後述する異議申し立て(反対通知)を出しても、法律で定められた待機期間があり、コンテンツが戻るまでに最低でも10〜14営業日ほどかかります。
同じページに複数の虚偽申請を重ねられると、圏外の期間がさらに長引く恐れがあります。
数週間から、場合によっては数か月にわたって主力ページが検索に出ない状態は、広告費に換算すれば大きな損失です。季節商戦や繁忙期にこれが重なれば、事業計画そのものに影響しかねません。
たとえば、特定のサービス紹介ページから毎月の問い合わせの大半を得ている事業者にとって、そのページが一つ消えるだけで受注の流れが止まります。ページ数が限られる中小企業ほど、一枚あたりの重要度が高く、被害の相対的な打撃が大きくなりやすい点にも注意が必要です。
「気づけない」ことが最大のリスク
被害の本当の怖さは、削除が静かに進むことにあります。ページが消えても大きな警告が出るわけではなく、検索結果の最下部に小さく「DMCAに基づき一部を削除した」旨の注記が付くだけです。
ここまでスクロールして読む利用者はほとんどいません。
Google Search Consoleに警告が届く場合もありますが、実務家からは「複数の申請が重なると通知の多くを取りこぼしてしまう」という指摘もあります。Search Consoleの通知だけに頼っていると、被害の全体像を見落とすおそれがあるのです。
結果として、多くのサイト運営者は「アクセスが落ちた」と気づいて初めて調査を始めます。しかしその時点で、すでに数日から数週間が経過していることも珍しくありません。
気づくのが遅れるほど、取り戻すまでの空白期間も長くなってしまいます。
自社サイトが標的になっていないか確認する方法

攻撃そのものを完全に防ぐことは難しくても、「早く気づく」ことは自分でコントロールできます。ここでは、被害に素早く気づくための具体的なチェック方法を紹介します。
特別なツールがなくても、今日から始められるものばかりです。
検索結果とSearch Consoleでのチェック
もっとも手軽なのは、自社の主要ページや看板となる見出しで、実際にGoogle検索してみることです。削除が起きている場合、検索結果ページの最下部にDMCAによる削除の注記が表示されます。
定期的に自社名やサービス名で検索し、この注記が出ていないかを確認しましょう。
あわせて、Google Search Consoleの「検索パフォーマンス」も定点観測してください。特定のURLだけ表示回数やクリック数が急にゼロ近くまで落ちていれば、削除を疑うサインになります。
ページ単位で数値を追える体制を整えておくことが、早期発見の第一歩です。
売上や問い合わせに直結する重要ページほど、監視の頻度を上げておくと安心です。週に一度でも決まった曜日にチェックする習慣をつけるだけで、被害の空白期間を大きく縮められます。
チェックの際は、単に順位を見るだけでなく「そのページが検索結果に存在しているか」という視点を持つことが大切です。順位が下がったのか、それとも丸ごと消えているのかで、原因も対処も変わります。
両者を切り分けて確認する習慣が、正しい初動につながります。

Lumenデータベースで削除通知を探す
Googleは、受け取った削除申請の内容を「Lumen(ルーメン)データベース」という第三者の研究アーカイブに登録し、削除された検索結果からもそこへリンクしています。ここを調べれば、自社ドメインを対象にした申請が出されていないかを確認できます。
Lumenには数千万件もの削除通知が蓄積されており、その数は今も日々増え続けているとされます。自社ドメイン名で定期的に検索しておけば、削除申請の存在にいち早く気づけるため、監視の手段として有効です。
ただし、Lumen側も注意を促しているように、通知がアーカイブに載っていること自体は、その申請が正当だったことも、実際に削除が実行されたことも意味しません。あくまで「どんな申請が出されたか」を示す記録として活用し、事実確認の出発点として使うのが正しい向き合い方です。
削除されたときの対処と予防策

実際に削除されてしまった場合でも、正当なコンテンツであれば取り戻す道は用意されています。ここでは異議申し立ての流れと、被害を最小化するための日ごろの備えを解説します。
落ち着いて手順を踏むことが、最短での復活につながります。
異議申し立て(反対通知)の流れと期間
自分に正当な権利があり、申請が誤っていると考える場合は、Googleに「反対通知(カウンターノーティス)」を提出できます。Googleの法的ヘルプページ(support.google.com/legal/answer/1120734)に、申請に必要な項目と手順が案内されています。
重要なのは、復活までの待機時間を数える「時計」が、Googleが有効な反対通知を受け取った時点から動き始めるという点です。有効な反対通知の提出後、法律にもとづき10〜14営業日ほど待つと、相手が裁判所へ訴え出ない限りコンテンツが戻されます。
つまり、気づいてから提出までを早くするほど、復活も早まります。
なお、反対通知には虚偽記載への罰則を伴う宣誓が含まれます。手続きそのものは難しくありませんが、著作権や法的な判断が絡む場面では、無理に自己判断せず弁護士などの専門家にご相談ください。
特に相手とのやり取りが法的な争いに発展しそうな場合は、早めに専門家の助言を得ることをおすすめします。
被害を最小化する予防のポイント
攻撃を根本から防ぐことはできなくても、被害の大きさは日ごろの備えで変わります。まず有効なのが、自社コンテンツの「発行日つきの証拠」を残しておくことです。
公開日がわかる形で記事を保存・アーカイブしておけば、後から「盗用だ」と主張されても、自分がオリジナルの著者であることを示せます。
具体的には、公開時にページのスクリーンショットを日付とともに保存する、Web魚拓のようなアーカイブサービスに記録を残す、CMSの投稿履歴を残しておくといった方法が挙げられます。手間はわずかですが、いざ「先に公開したのはどちらか」が争点になったときに、こうした記録が有力な裏づけになります。
次に、監視を仕組み化することです。人の記憶に頼るのではなく、主要ページのSearch Console数値やLumenの検索を定期的に確認するルールを決めておきましょう。
削除と対応の間の空白時間こそ、自分でコントロールできる唯一の部分だからです。
あわせて、会社名やサービス名まわりの検索環境全体に目を配ることも大切です。DMCAの悪用に限らず、ネガティブな情報の拡散やサジェスト汚染など、企業の評判に関わるリスクは複合的に起こります。
日常的なモニタリングと、いざというときの相談先を持っておくことが、結果的に最善の防御になります。


よくある質問(FAQ)

Q. 日本の会社のサイトも、DMCA削除申請の対象になりますか?
はい、対象になり得ます。DMCAはアメリカの法律ですが、Google検索からの削除は世界共通の窓口で処理されるため、日本国内向けのサイトであっても虚偽申請の標的になる可能性があります。
国内サイトだから安全、とは言い切れません。
Q. 削除されたページは、ファイルごと消えてしまうのですか?
いいえ、多くの場合ページのデータ自体はサーバー上に残っています。あくまでGoogle検索の結果に表示されなくなる状態です。
ただし検索からたどり着けなくなるため、集客面では公開していないのとほぼ同じ影響が出ます。
Q. 反対通知を出せば、すぐにページは戻りますか?
すぐには戻りません。有効な反対通知をGoogleが受け取ってから、法律で定められた10〜14営業日ほどの待機期間を経て復活します。
相手が期間内に裁判所へ訴え出た場合は、さらに時間がかかることもあります。早く気づき、早く提出することが復活を早める鍵です。
Q. 自分で対応するのが不安です。相談はできますか?
もちろん可能です。検索環境の監視や、削除・評判リスクへの対応は、専門的な知見があるほど早く正確に動けます。
著作権など法的な判断が必要な部分は弁護士にご相談いただきつつ、検索面の監視や対策については当社のようなSEOコンサルタントにご相談いただくと安心です。
まとめ:早く気づける体制が最大の防御になる

DMCA削除申請の悪用は、本来は著作権者を守るための制度が、競合を検索から消し去るネガティブSEOに転用されてしまっている問題です。2026年には大手メディアの正規記事が次々と削除され、Google自身も認識しながら制度上すぐには止められない状況が続いています。
中小企業にとっての最大のリスクは、被害に「気づけない」ことです。削除は静かに進み、通知を取りこぼすこともあるため、アクセスが落ちて初めて気づく頃には空白期間が広がっています。
だからこそ、自社名や主要ページでの定期的な検索、Search Consoleの数値の定点観測、Lumenデータベースの確認という三つのチェックを習慣化することが、何よりの防御になります。
万が一削除されても、正当なコンテンツであれば反対通知で取り戻せます。発行日つきの証拠を残し、早く気づいて早く動く体制を整えておきましょう。
攻撃自体は防げなくても、「削除から復活までの空白をどれだけ短くできるか」は、自社の準備しだいで大きく変わります。
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記事執筆・株式会社アクセス・リンク 代表取締役
Webサイト制作歴10年以上の経験を元にSEOコンサルティングを行い、延べ1,000件以上のサポート実績を誇ります。個人事業主や中小企業向けのホームページ制作やSEOコンサルティングを得意としています。
(社)全日本SEO協会 認定SEOコンサルタント
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